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投資を始める前に考えること
投資を始めるときの手順 |
① 家計の見直し
投資を行なうには元本が必要です。ところが、家計が赤字なのに無理やり投資にお金を回した場合、元本割れすれば即「困窮」です。ですから、元本を生み出すためにはまず家計を黒字にしなければなりません。皆さんの家計が、①生命保険料が月額2万円以上だ、②通信費が月額数万円だ、③使途不明金がある、④キャッシングやリボ払いがある、⑤住宅ローンの60歳時の残債額が不明だ――というような場合、皆さんの家計は黄信号であり、直ちに家計を見直す必要があります。特に生命保険を見直すことは節約効果が大きいといえます。
② 資産配分
家計を見直して黒字が出たら、今度はそれを3つに配分します。これは自分がどれだけリスクを取れるか検討するために必要です。①はすぐ使う予定のあるお金。これは普通預金にします。②は教育資金や住宅資金などすぐには使わないが使い道が決まっており元本割れが許されないお金。これは定期預金や国債などに配分します。③は家計の黒字から①と②を差し引いてもなお残るお金。この中から投資に配分することを考えます。③のお金の中から投資するなら、多少元本割れしてもそのことで人生設計が大きく左右されるリスクは低いといえます。
③ 運用商品の選択
ビジネスパーソンが選択する商品としては、NISA、つみたてNISA、iDeCo、などが考えられます(※)。FX(外国為替証拠金取引)、REIT(不動産投資信託)、暗号資産(暗号通貨)取引はハイリスクハイリターンであり高度な専門知識が必要ですから、私はビジネスパーソンにはお勧めできません。
※なお、情報労連で取り扱う年金共済《ひろがり》は安全性・貯蓄性の高い共済です。
④ 取引先の選択
投資の取引先を手数料の安さだけで選択してはいけません。第一に信用がおけるところ、第二に面談で親切に対応してくれるところを選ぶことが大切です。私は労働組合が設立した労働金庫をお勧めします。
投資と同時に考えること |
① 投資だけでは安心できない
話は変わります。皆さんはなぜ投資に関心があるのでしょうか。その理由は様々ですが、やはり将来不安への備えが大きな理由でしょう。確かに、巷では年金制度は崩壊するという人もいます。でも、年金制度が信頼できて将来不安が減少すれば、投資に回すお金を今の消費に充てることができます。例えば、皆さんの老後を65歳から95歳までと仮定し、老後一人暮らしの生活費が月額15万円(※1)だと仮定すれば、65歳から95歳までの生活費は合計5、400万円(15万円×12か月×30年)です。年金制度が無いとすれば、この金額を全て自助努力で用意しなければなりません。一方、年金制度があり年金受給額が月額16万円(※2)だと仮定した場合、年金で生活できそうなので将来不安は減少し、投資に回すお金は今の消費に充てられそうです。厚生年金加入が短期間の場合、パートナーがいる場合、持病がある場合など前提条件が変われば金額は異なりますが、この一例でも、年金制度の大切さがお分かり頂けると思います。
※1 総務省家計調査報告資料
※2 厚生労働省資料
② 相互扶助が必要です
勿論、インフレに備える、知的ゲームを楽しむ、SDGs推進企業を応援するなどの理由で投資することは大切です。しかし、年金制度が崩壊したら自助努力で5、400万円用意できますか? その上、医療制度まで崩壊して医療費の自己負担が10割になったら老後の心配どころではありません。ですから、投資などの自助努力だけでもなく、国家だけに頼るのでもなく、国民全体が保険料を出し合って支え合う相互扶助による公的保険制度が必要だということを忘れてはなりません。ところが一部に、例えば国家が国民全員に月額数万円配って、代わりに社会保障制度を廃止するという案がささやかれています。皆さんはこの案に賛成ですか? 選択の時が迫っています。
中島豊一
Toyokazu Nakajima
情報労連アドバイザー / 特定社会保険労務士 / 2級ファイナンシャル・プランニング技能士 /(2008年までNTT労働組合役員)