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社会保険を褒めて育てる
2024年は医療・介護・年金の社会保険改革の年です。日本の社会保険は世界に誇る制度です。確かに改革は必要ですが、だからこそ制度不信を意図的に煽る言説に惑わされず、制度を正しく理解し、褒めて育てなければなりません。
保険という仕組みの優位性 |
ケガ・病気・死亡などはいつ起きるか不明なので積立や投資での備えが間に合わないこともあるし、いくら貯蓄があれば足りるのかも不明です。対して保険はいつでも定められた額が保障されます。自己責任論に比べた保険の優位性は明確です【図1】。
医療 |
世界に誇る健康保険
1.日本の健康保険は世界に誇る制度でその4本柱は【図2】の通りです。確かに、財政のひっ迫やマイナ保険証の「今どきカードを全員再配布?オンプレミスのシステムが上手く連携できるの?」など課題山積で改善が必要だとはいえ、だからこそ、褒めて育てなければなりません。
2.アメリカの医療保険の概要
健康保険が優れていることは自由の国米国と比較しても明らかです【図3】。米国の公的医療保険は①メディケイド(低所得者対象)と②メディケア(高齢者対象)の二つで※、二つ合わせた加入率は37%程度です。公的医療保険に加入できない国民は民間医療保険に加入する義務があり加入率は66%程度です。この内、フルタイムなどの従業員数50人以上の事業主には民間保険提供義務がありその加入率は国民全体の54%程度です。国民全体の無保険者率は8%程度です。(※1他に、児童医療保険プログラム、軍人向け公的医療保険がある。※2加入率はいずれも二重加入含む)
介護 |
ビジネスケアラー増加で経済損失9.2兆円
2030年にはビジネスケアラーの増加により約9.2兆円の経済損失になるとされます(経済産業省「新しい健康社会の実現2024」)。ヤングケアラー問題も深刻化しており、将来を担う若者がしっかり勉強できるように介護の社会化が必要です。ですが、介護人材は65万人不足するとされます。経済成長には公的介護保険の充実と介護人材確保が必須であり、公的介護保険への公費抑制は誤りです。
年金 |
損とは言えない!公的年金
厚生年金財源には保険料の本人負担分を含め4つあります【図5】。ですから、本人負担分の累積保険料に対し65歳以降の年金の累計は約10年で約1倍、約20年で約2倍、約30年で約3倍になると推測できます。年金は生涯もらえるので、長生きするなら公的年金が損だとは言えません。
社会制度改革に向けて |
自己責任論に比べ社会保険は優れています。社会保険を補うための自己責任は必要ですが、社会保険なくして「全額自己負担」するのはおよそ不可能です。社会保険を褒めて育てなければなりません。社会保険の財源である保険料と税金の源泉は経済成長です。経済成長には、148年も続く中央集権型経済を改め、①地方創成型経済(企業運営のフラット化、多重請負の解消、エネルギーの地産地消、地域公共交機関の充実など)と②地方・若者支援型社会保障(住宅、教育、雇用等の提供など)を備えた、しなやかな社会への転換が必須だと言えます。(参考:内閣府「2020年第5回 選択する未来 2.0」資料)
中島豊一
Toyokazu Nakajima
情報労連アドバイザー / 特定社会保険労務士 / 2級ファイナンシャル・プランニング技能士 /(2008年までNTT労働組合役員)