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筆者自身の大病の経験を通して
民間の医療保険について考えます
大病の経験 |
筆者は今までに3回大病を患い長期入院した経験があります。一度目は今から30年前の43歳の時で、定期健康診断で大腸がんが見つかりました。それでも早期発見でしたので、医師たちは内視鏡手術での摘出を検討したようですが、当時内視鏡手術は未熟であり、万全を期すため開腹手術で摘出することになりました。その判断が功を奏し、現在まで再発も転移もなく元気に過ごしています。二度目は48歳の頃で、過労によるうつ病で1ヵ月近く入院し、その後仲間に支えられて仕事に復帰することができました。三回目は56歳の頃で、慢性膵炎により半年以上入院し、勤めていた会社を退職しました。その後仲間や先輩に助けられて再就職することができ、今ではこうして原稿を書いています。困難な時、仲間や先輩から応援して頂いたことは勿論、「投獄と大病は経験するものだ。壮絶な出来事が深い内省の機会になる」と励まされた言葉も大きな力となりました。仲間や先輩には感謝の言葉もありません。
困った時の公的健康保険 |
さて、お医者様にかかったときの自己負担割合は、大多数の勤労者の場合3割です。そうすると医療費が100万円の場合自己負担額は30万円になるはずです。しかし、健康保険により自己負担上限額が決まっており、協会けんぽの場合、実際の自己負担額は約9万円(月ごと)で済みます。これを「高額療養費制度」と言います。その上、電通共済生協を利用できる企業の内、多くの健康保険組合の自己負担上限額は2万5千円~3万円程度(月ごと)です(下図参照)。(注:高額療養費制度は、退院などの時に一旦3割負担分を全額窓口で支払い、後日「高額療養費(窓口で支払った3割負担分の内、自己負担上限額を超える部分)」が還付される仕組みです。ただし、マイナ保険証を利用する場合、もしくは予め「限度額適用認定証」を提出した場合は最初から自己負担上限額となります。)
健康保険制度の改悪が検討されている |
現在、政府は自己負担上限額の引き上げを検討しています。その理由は「高齢者医療費の増大により、医療制度の財政が危機的状況にある。現役世代が高齢者医療制度を財政的に支えているが、これ以上の負担を現役世代に求めるのは困難であるため、患者の自己負担を引き上げざるを得ない」と説明しています。しかし、がん患者など長期療養を必要とする人々にとって、仕事・家庭・治療を両立させることは容易ではなく、自己負担上限額の引き上げは生活に直結する深刻な問題です。一方、健康保険組合連合会は「現役世代の保険料負担をこれ以上増やすのは難しい」と主張しています。こうした双方の課題は、いずれも切実です。政府の本来の役割が「国民の命と健康を守ること」であるならば、医療制度を充実させることにより双方の切実な課題を解消しなければならず、そのためにこそ税金の投入による財源の確保が求められます。ところが、政府は、医療制度の充実には手をつけず、防衛費に43兆円という巨額の予算を優先しました。国民の命を軽視したまま、防衛力の強化を語るのは、論理矛盾と言えるでしょう。
入っていて良かった民間の「医療保険」 |
一方、公的健康保険ではカバーしきれない支出もあります。そのため民間の「医療保険」で備えることも必要です。自己負担となるものは別表の通りです(金額等は筆者による経験であって統計値ではありません)。
別表の場合1日4,353円程度の自己負担と入退院時のタクシー代及び医療費の自己負担などが必要です。17.7日※入院したとすれば112,048円程度の支出が必要です(差額ベッド代や先進医療は考慮していない)。また、高額療養費が後日還付される場合は、還付されるとはいえ窓口での一時支出が大きいと言えます。これらの支出は貯蓄で足りると考えることもできますが、大病を経験した筆者が思うには、いざ病気になると一番先に気に病むのはお金の問題です。その時「医療保険」があれば心強く感じられます。特にがんの場合はお金のことばかりでなく悩み事は複雑ですし、治療のため通院が長引くことも考えられます。その時にがん保険やがん保障の付いた「医療保険」があれば、少なくともお金の心配は軽減され、多少なりとも心の平安が得られます。公的健康保険制度の改悪は止めなければなりませんが、最悪を想定するのがリスクマネージメントだとするなら、医療費の自己負担上限額の引き上げも想定して民間の「医療保険」への加入を検討することも必要です。
※生命保険文化センター「2022年度生活保障に関する調査56ページ―過去5年間に入院した人の入院日数は平均で 17.7 日-https://www.jili.or.jp/research/chousa/8944.html」
中島豊一
Toyokazu Nakajima
情報労連アドバイザー / 特定社会保険労務士 / 2級ファイナンシャル・プランニング技能士 /(2008年までNTT労働組合役員)

















