NTT東日本 東京さんさ保存会
伝統の太鼓と踊りで
仲間とつくり上げる一体感
NTT労働組合東京総支部 坪井 和彦さん / 本多 輝子さん
40年にわたって続く盛岡との交流
平日の夜、NTT上野ビルの食堂に太鼓の音が鳴り響く。太鼓を担いだ人たちと踊り手たちが列を組んで踊るのは、「盛岡さんさ踊り」の練習をする「NTT東日本 東京さんさ保存会」(以下、保存会)の皆さんだ。
「盛岡さんさ踊り」は、岩手県盛岡市で毎年8月1日から4日に開催される夏祭り。ルーツは地元に伝わる盆踊りで、1978年に現在のようなパレードが行われるようになった。太鼓を担いで踊る打ち手と、澄んだ音色の笛、優雅に舞う踊り手が隊列を組んで一体となり、力強い群舞を繰り広げる。2014年には「和太鼓同時演奏の世界記録」としてギネスブックに認定された。
この盛岡伝統の踊りを、遠く離れた東京の地で大切に受け継いでいるのが、この保存会だ。発足は40年前の1985年。この年の3月に東北新幹線の上野─盛岡間が開通し、当時の下谷電報電話局と盛岡電報電話局の間で「文化・産業・経済・スポーツなどの交流を通じて両局間の友好と地域の発展を目指す」宣言書が読み上げられ、調印式が行われたことがきっかけだった。盛岡にも同様に「NTT東日本 盛岡さんさ同好会」がある。
「最初は設備部が主体で男性が多かったのですが、時代とともに組織も変わり、今はNTT東日本 東京東支店の営業やサポート部門などさまざまな部署に加え、グループ会社の方や岩手の社員のご家族も含めて22名で活動しています」
そう話すのは、2018年から会長を務める坪井和彦さん。副会長の本多輝子さんとともに保存会の運営に当たっている。
坪井さんが保存会に参加したのは2011年、東日本大震災がきっかけだった。以前から先輩に誘われていたものの、「全く興味がなかった(笑)」という。しかし、震災後「被災地が少しでも盛り上がるように」との思いで参加を決意した。
「太鼓って譜面があるんですよ。それをまず覚えて、段ボールを担いで毎日練習。太鼓と足が合わないし、踊りと太鼓も合わない。最初は本当に大変でした。でも、やってみたら楽しかったです」(坪井さん)
本多さんは、2011年にNTT東日本 東京東支店配属になった。この地域は祭りが盛んだったことから、三社祭りや東京時代まつり、「うえの夏まつりパレード」の「盛岡さんさ踊り」など、さまざまな祭りに参加するようになった。本場の「盛岡さんさ踊り」にも参加し、「その壮大さ、優美さに圧倒され、心をつかまれました」と話す。
20代の頃、職場の同僚だった2人は、偶然にも保存会で約30年ぶりに再会。互いに支え合いながら今日まで続けてきた。
2019年「うえの夏まつり踊り」集合写真
NTT東京東支店2024下期キックオフ
2024年の「盛岡さんさ踊り」(NTT東日本提供)
全員参加の運営で、新たな目標に挑む
活動のハイライトは、本場の「盛岡さんさ踊り」への参加だ。NTT岩手グループに合流し、総勢約300人で演舞する。NTT岩手グループは2023年に優秀賞を獲得している。
東京では、毎年7月に開催されてきた「うえの夏まつりパレード」に参加し、2019年には130人を超える参加者で「盛岡さんさ踊り」を披露した。また、年2回、ボランティアで介護施設を訪問して踊りを披露し、2016年には地元の台東区から表彰を受けた。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行を機に、練習は3年間休止。その後、うえの夏まつりのパレードは廃止され、ボランティア活動も困難になってしまう。
2024年、ようやく本場の「盛岡さんさ踊り」に再び参加できるようになり、NTT東日本 東京東支店のキックオフでも演舞を披露した。そして、2025年の「盛岡さんさ踊り」にも参加し、大いに盛り上がった。
練習は8月の本番に向けて、5月から週2回、3カ月間の集中練習を行う。踊りは3種類あり、本番では2番「七夕くずし」と4番「福呼(ふっこ)踊り」を披露する。「うえの夏まつりパレード」では3番「栄夜差(えやさ)踊り」を披露していた。
「盛岡の踊りをそのまま踊りますので、盛岡のさんさ同好会の方々にときどき技術指導していただいています。盛岡の方々がとても優しくて、本場の祭りには、必ずお礼の気持ちで参加させてもらっています」(坪井さん)
盛岡との交流は、現在も活動の大きな支えとなっている。
本番前の3カ月間は、仕事を終えたあと、NTT上野ビルの食堂で週2回練習に励む
保存会の運営で最も大切にしているのは、メンバー全員と情報を共有したうえで、みんなの声を聞くこと。坪井さんは「みんなが楽しめるように、相談しながらやっています」と話し、本多さんも「それぞれの考え方があるので、一人ひとりの声を聞きながら、みんなで一緒につくり上げることを心がけています」と続ける。
来年(2026年)は、新たな踊りにチャレンジする。2022年にできた新たな踊りである5番「吉希翔(きっきしょう)」だ。春に盛岡の同好会から指導を受け、再来年の「第50回盛岡さんさ踊り」で披露するのが目標だ。また、都内で踊りを披露できる新たな機会も探している。
「この活動の魅力は、仲間と同じ目標に向かって汗を流しながら、一つの“作品”をつくり上げていくことで得られる一体感です。職場以外にも交流が広がるため、人間性が豊かになっていくようにも感じています」(本多さん)
「“元気の源”になるような活動です。年齢を問わず楽しめるので、参加者をさらに増やして、盛り上げていきたいと思います」(坪井さん)
2025年の「盛岡さんさ踊り」でのNTT岩手グループの様子。
関連リンク
(2025年10月掲載)

















